「・・・あずま、さ・・・っ・・・梓馬さん・・・・っ!」



香穂子に名前で呼ばれる度、嬉しさと充足感が満ち溢れる。

互いに傷付け合って、遠回りをした日々にはもう戻らない。










** 相 愛 **










白い褥と、香穂子が身に纏っている緋襦袢のコントラストが目に眩しい。

そして香穂子自身の肌も白くて美しかった。


だが、その分だけ蒼い痣が目立ってしまって痛々しかった。

改めて柚木はその傷を付けた男に激しい憤りを感じる。




「ひどいな・・・」

「・・・あ・・・・・ごめ、なさ・・・・・・・っ」

「いや、お前に怒ってる訳じゃない・・・だから、そんな顔するな」

「でも・・・・」




さり気なく襦袢で身体を隠そうとする香穂子の腕を柚木が掴んだ。




「なんで隠すの?」

「だって、穢いし・・・見られたくない・・・」

「だったら俺が消毒をしてあげる」




そう言って柚木は露わになった肌の痣の上から舌を這わした。

ビクリと反応する香穂子は無視して、次の痣も同じように舐める。

時々唇で吸い上げるため、蒼い痣の上に紅い華も咲いていた。




「・・・っあぁ・・・、やだ・・・ぁ・・・」

「ほら、じっとして。 まだ消毒は終わってないよ」

「ぁ・・・あ・・・っ・・・・・・んぅ・・・」

「気持ちいいの? ココ、触れてもないのに屹ってるぜ・・・」




わざと意地悪に囁きながら、胸の尖りをペロリと舐めた。

それだけで背を反らして過剰に感じている香穂子に柚木は気を良くする。




「じゃあ、こっちも触ってやらないとね」

「やぁぁ・・・・・っ」

「嫌? なら、やめるか?」

「やだ・・・」

「どっち?」

「・・・して・・・やめないで、ください・・・」




上気した頬に、涙で潤んだ瞳。

こういう時に見せる 『女』 の顔が柚木の欲情に火を灯す。

だが、ここで本能のまま行動する訳にはいかない。

柚木は残った理性を総動員させ、香穂子を怯えさせぬよう優しく、快楽だけを与えてやった。



カリッと先端を甘く噛めば、高い嬌声が上がる。

彼女をこんなにも乱れさせているのは自分だと思うと嬉しくて、更に愛撫する手に力が篭った。




「ここも・・・もう、凄いね」

「ひゃうっ・・・!」




そう言って香穂子の下肢へ指を滑らせた。

先程から中途半端な刺激を受けたまま放置だったそこは、蜜が太腿まで溢れている。

柚木は解すまでもなく準備が整っているその場所に指を挿入し、出し入れを繰り返す。

別に焦らしている訳ではない。

ただ・・・・柚木自身も心から繋がっている行為を実感して、より感じていたいから。




「あ、あぁっ・・・・梓馬さん、もう・・・・っ」

「まだ、もう少し待てるだろう?」

「無理・・・・・お願い・・・ぁ・・・早くっ・・・」

「・・・まったく、しようのない子だね」




急かされて、柚木は苦く笑う。

香穂子の望み通り、猛った己を取り出して貫く。

最奥まで届いたら中が更に締まった。




「・・・っ、ああぁァ―――・・・・!」

「挿れただけなのにイッたのか・・・・?」

「だって・・・っ」

「いいよ、何度でも感じて・・・・俺を―――」

「・・・梓馬さん・・・っ、梓馬さん・・・・!」




自分の名前を連呼して縋ってくる彼女を抱き寄せて、何度も何度も口付けた。

以前から幾度と無くしてきた行為だが、これほど満たされた気持ちになったのは初めてだ。

このまま二人が一つに溶け合えてしまえたら、と本気で思う。




「香穂子・・・こうすれば、もっと・・・・っ」

「ふぁっ・・・・あ・・・深・・・っ」

「・・・は・・・っ・・・、くッ・・・・・!」




言葉が告げられない程に彼女を堪能し、果てた。

ドクドクと脈打ち、収まりきらなかった白濁の劣情が溢れ出している。

そんな淫靡な光景をぼうっと眺めながら、柚木はふと思った。

――― もし、このまま香穂子を孕ます事が出来たなら・・・本当の意味で香穂子を手に入れられるだろうか、と・・・・。

それは不可能だと知りながら、そんな事を望んでしまう自分が滑稽すぎて自嘲する。




「・・・・本当に詮ないな」

「え? どうかしましたか・・・?」

「いや・・・・何でもない。 それより、こっちに集中して」

「ん・・・っ、ああぁ・・・・・!」




見つめられた瞳から自分の愚かしい考えが暴かれてしまいそうで。

柚木は誤魔化すかのように行為を再開した。


香穂子は柚木を求め、柚木も香穂子を求める。

時には激しく、時には互いの存在を確認するように。

言葉はもう要らなかった。










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明け方―――。



陽が昇る前に、柚木は小鳥の囀りで目を覚ました。

隣を見れば香穂子がまだ眠っている。

元よりあどけない顔立ちは瞳を閉じていると一層幼く見えた。

瞼に掛かった前髪を指で払ってやり、柚木は小さく微笑した。

こんなにも満たされた気持ちになったのは、どのくらい前の事だったろうか・・・・・。

少なくとも、つい先日までは考えられなかった事だ。


露わになった彼女の額に口付けを落とす。

そうしたら、香穂子の瞳がうっすらと開かれた。




「ごめん、起こしたか?」

「・・・・いえ・・・・」

「まだ早い時間だから寝てていいよ」

「・・・・梓馬さんは?」

「ちゃんと傍にいるよ。 だから安心しておやすみ・・・」




香穂子の髪を梳きながら答えると、安堵したのか再び瞳が閉じられた。

そして柚木も褥に横たわり、衾を香穂子の方へと引き寄せて自分もまた眠りについた。










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★あとがき★

タイトル通り、ようやく想い合えた二人です。
どうでもいい話。 時代設定が古いから、横文字は控えました。
例えば、『キス』 じゃなくて 『口付け』 にしたりとか・・・。
表現が被って困る。 言葉のボキャブラリーが少ないので (汗)