Special perfume








「・・・ねぇ、香穂子。 今日の昼休みさ・・・・柚木さんとナニかあった?」

私が屋上から教室に戻って来て天羽ちゃんに開口一番に聞かれたのがそれだった。

「はぁ!?」

「隠したって無駄だよ〜? ニオイしっかりと付けてきちゃってさ!」

「・・・・ニオイ?」

自分の制服を嗅いでみても特に変わった匂いはしなかった。

「そっ。 柚木さん愛用の香水の匂い! デューン・プールオム・・・でしょ?
 移り香ってさ、案外自分だと気づかないんだけど周りには解るんだよね。
 記事にはしないであげるから、あんたも気をつけなよ?」





**********





「・・・・って言われました。 天羽ちゃんに」

とにかく、柚木先輩には学校での行為を止めてもらわなくちゃ、と思って帰りの車内で今日言われた事を言った。

けれど、先輩は相変わらずどこ吹く風な様子で『だから?』の一言で一蹴された。

「大体、お前に決定権なんてあると思ってるのか?」

そう言う先輩の目は『くだらない事を言わすな』って語っている気がして――――いや、そう語っている。

これ以上言うのは止めようかとも思ったけれど、それは悔しくてやっぱり最後まで言う事にした。

「あ、あるんじゃ・・・ないんですか? 恐れ多くも一応、柚木先輩の彼女・・・・・ですし」

怖々と言葉を続けると、先輩は溜め息を付いて完全に目が据わっていた。

先輩の放つオーラはさっきよりも黒くなって、無意識に逃げを打つ程だった。

幸い、リムジンの車内は広くて扉側に逃げれば柚木先輩からは結構距離がある。

だけど先輩の動きの方が一瞬早くて、すんなりと腕の中へと捕らわれてしまった。

そのまま世界が反転して、気づいたときには先輩に押し倒されていた。

「ちょっ、せんぱ・・・・んっ」

抗議しようとしたら唇を奪われてしまった。

「ん・・・ぅん・・・・っ、んん・・・」

流石に息が苦しくなって空気を吸おうと少し口を開いたら、そこから先輩の舌がするりと入り込んできた。

ねっとりと舌を絡め取られて、ちゅくちゅくと舌を吸われた。

「んん・・・ふぁ、んっ・・・・」

巧みな先輩の舌先に口付けられているだけなのに体温が上昇していくのが解る。

びくびくと肌を戦慄かせながら苦しげな吐息をつき、次第に頭の中がぼーっとしてくる。

ちゅぷ、と音がして漸く舌が引き抜かれ、口角から零れる雫を先輩が舐め取っていく。

「恐れ多いとか、一応なんて・・・・言うな」

「・・・・え?」

唐突にそう言われて思わず聞き返してしまった。

すると先輩は、少し赤くなって目線を逸らしながら耳元で聞こえるか聞こえないかの音量で囁いた。

「お前は俺の彼女なんだから、自信くらい持て」

「・・・・柚木、先輩・・・・」

先輩からまさかこんな言葉を言われるなんて思ってもみなかったからじん、と涙が出そうになる。

だけど、その感動も長くは続かなかった。

「あの、何しているんですか・・・・?」

気づいた頃には胸元のスカーフが座席の下に落とされていた。

「俺の気分を害したお仕置きだよ」

先輩はセーラー服の上着ごと下着まで上に上げてしまった。

「あぁ・・・っ、だめ・・・・!!」

胸の頂きを片方は口に含んで、もう片方は指で転がして戯ぶ。

「お前もキスだけじゃ足りないだろ? ・・・ほら、もうこんなに尖ってる」

「いやぁっ・・・はぁ・・・ぅんっ」

指摘をされ恥ずかしくて必死に首を横に振った。

なのに先輩はそんな私を見てくすり、と小さく笑うとまた耳に口を寄せてきた。

「声、抑えなくていいのか? 前に聞こえてるぜ・・・・?」

先輩の視線の先に目を向けると、カーテンは引いてあるものの同じ車内で防音などある訳がない。

「・・・・・・っ!!」

慌てて口を手で塞ぐと、また先輩は小さく笑ってもう一度胸に顔を沈める。

今度は先端を甘噛みして、そのあと舌で掠めるように撫でていく。

反対の手はカリカリと軽く引っ掻くようにして弄ぶ。

「ぁっ、は・・・・んんっ・・・」

声を抑えようと意識すればするほど、身体は敏感に反応してしまう。

次第に先輩の手はだんだん下へと下がっていき、下腹部を撫で上げて下着の上から一番敏感な蕾を探った。

「ひゃぁ・・・・っ」

そこに触れられた途端、電気が走ったようにビクン、と身体が揺れた。

「すごい濡れてるね・・・・。 下着の上からでも解るよ?」

それは自分自身がよく知っていた。

もう先ほどから下着の役割を果たしてはいない。

それを知られてしまって消えてしまいたい程の羞恥心に駆られる。

先輩は素早く最後の下着を脱がせると指を宛がった。

静かな車内にくちゅ、という卑猥な水音が響く。

先輩の細くて長い指がそっと私の中に忍び入る。

「あぁ・・・っ」

「まだ入るだろう・・・?」

そう言って、先輩はまたもう一本指を増やした。

「ふ・・・っ、も・・・・無理・・・・ああぁ・・・・っ」

「そう? じゃあ、抜こうか?」

くちゅ、といって私の中から二本の指が抜かれた――――けれど。

「あ・・・っ」

奥がじんじんして収縮しているのが解る。

「もの足りないんだろ? 何が欲しい?」

ここで言わなければ先輩は何もしてくれないのは今までの行為で解っている。

だけど、懇願してまで快感を得る自分はすごく浅ましくて惨めだと思う。

でも・・・・・・・・・。

「せん、ぱいのが―――欲しい・・・・」

「ふふ、素直だね・・・。 可愛いよ」

そう言って微笑む先輩は綺麗だと思う。

皆が知っている優しいだけの猫かぶりな笑顔じゃなくて、私だけに見せる素の笑顔が・・・・。

「・・・・痛かったら無理しないで言ってくれていいから」

額に優しいキスを落として、いつもの意地悪な口調じゃなくて本当に気遣ってくれているんだと窺い知れる

穏やかな口調に愛しさがより一層募る。

少しでもこの想いが伝わればと思って先輩の首に腕を回してぎゅっ、と抱きついた。

「大丈夫・・・です。 ――――だから、来て・・・・・・梓馬・・・」

「・・・・・っ!! お前、解っててやってるの?
 我慢出来なくなるじゃないか・・・・言っておくけど、もう優しくなんて出来ないからな?」

先輩の言っている意味はよく解らないけど、我慢はして欲しくないから私は頷いた。

「はい、優しくなんてしなくていいです。 梓馬の事が好きだから何をされても平気」

「・・・・だから、それが――――もういい。 やっぱりお前には適わない・・・・。
 香穂子、愛している・・・・・・ずっとお前だけを・・・」

「私も・・・・・梓馬以外は見えないから」

そうして私たちは互いの体温を分け与えるかのように啄ばむだけの軽いキスを幾度も交わした。

身体を求め合うのも一つになれた感じがして好きだけれど、こういう気持ちの篭ったキスも大好き。

暫くキスの嵐が続いて、終わった後は互いに見つめ合った。

「・・・・ごめん・・・そろそろ、いいかな・・・・?」

「うん・・・・。 私も欲しい・・・」

言うのはやっぱり恥ずかしいけれど、求めている気持ちはいつも同じだから。

「香穂子・・・・お前、可愛すぎ・・・」

「え? 今、何か言いましたか?」

「・・・・別に。 力抜いて」

額に触れるだけのキスを落とされて、私は先輩に委ねるように全身の力を抜いた。

「う・・・んんっ・・・・ああぁぁ・・・・っ」

ゆっくりと私の中に先輩が入ってくる。

労わるように、慈しむように、ゆっくりと―――――。

初めてじゃないから痛みはない。

だけど、その圧迫感が未だに慣れなくて、先輩はそれを解っててこんなに優しいんじゃないかと思う。

「・・・・大丈夫か?」

「は・・・・い・・・」

全て入り終わったけれど先輩は直ぐに動かないで待っててくれる。

汗で張り付いた髪をそっと梳いて額に、瞼に、頬にと宥めるようなキスをくれた。

やがて先輩の体積にも慣れてきゅっと締め付ける。

それが恥ずかしくて先輩の目を見ていられなくて慌てて逸らす。

「いい子だね。 動くよ」

最後に軽く唇にキスを落とすと、ゆっくり動き始めた。

内襞をこすられる感覚が気持ちいい、とまで思ってしまう。

そして、だんだん先輩の息も上がってきて動きも激しくなる。

ずるり、と私の中から先輩のがギリギリまで引き抜かれて再びグッと押し入る。

「あぁ・・・・っ」

何度も最奥を突かれて快感が身体中を駆け巡る。

「あっ・・・や・・・あず、まっ・・・・は・・ぁ・・・もぉ・・・・っ」

「あぁ・・・・イっていいよ・・・俺も、もう・・・・っ」

先輩が大きく腰を引いてその勢いで全部を一気に入れた。

「いやぁぁぁ・・・・っ」

「・・・くっ」

私が達したあと先輩も続いて私の中にその欲望を放った。




**********




「そういえば!! 学校では絶対にこんな事は駄目ですからね!?」

制服を整えている途中、天羽ちゃんの忠告を思い出してキッと先輩を睨んだ。

先輩はもうとっくに着替え終わってて、胡乱気に私を見遣ってキッパリ告げた。

「・・・またその話か。 嫌だね」

「なっ!?」

即答されて言い返す言葉がぱっと思い浮かばなかった。

だけど、先輩はそんな私に構わず言葉を続ける。

「あれは虫除けだから。 それに、ただ同じ香水を渡すだけじゃ芸がないだろ?」

・・・・・・虫除け??

「あのですねー。 私、先輩が言う程モテませんよ?
 告白されたのも、付き合った人も先輩が初めてな訳ですし・・・・」

自分で言うのもちょっと悲しい事だけど、先輩の誤解を解くためには仕方がない。

私が言い切ると、先輩はあからさまに大きな溜め息をついた。

「お前がそんなだから俺の苦労が絶えないんだよ・・・」

「だから何がですか。 解るように説明して下さい!」

先輩は綺麗に私の言葉をスルーして、車も家に着いたらしく到着した。

いつものように先に先輩が降りて扉を開けてくれる。

「はい。 無事にちゃんと送ったからな」

「・・・・無事じゃなかったですけどね」

不貞腐れたように文句を言いながら車から降りる。

「さっきまでは可愛い声で啼いていたのに、今はどの口がそんな事言ってるんだろうね?」

「せ、先輩・・・・っ!!」

一応ここは住宅街で、今は家の前なんだから近所や親に聞こえたんじゃないかと慌てた。

辺りを確認していると、顎を掬われて掠めるようなキスをされた。

それは一瞬の事で、次の瞬間にはもう何事もなかったようにいつもの意地悪な笑顔に戻っている。

「じゃあな、香穂子。 明日の朝もここで良い子に待っているんだよ」

そう言い残して先輩を乗せたリムジンは発進した。

どんどん遠ざかって見えなくなる車を睨みながら、先輩の熱が残った唇を押さえて呟く。

「・・・・もう、バカ」

キスをされたら何でもチャラになってしまう。

だからきっと明日も先輩に振り回されてばかりだと思う・・・・。










**********

★後書き★

初の裏創作です。
え〜、突っ込みどころ満載ですね・・・。
先ず・・・学校から香穂ちゃん家までとんだけ距離があるんでしょうねぇ。(遠い目)
そして、一番可哀想なのはリムジンを運転して下さっている運転手さんじゃないでしょうか??
後ろでヤられちゃ、集中出来なくて事故るって。(下品)
更に、皆様はお気づきでしょうか??
柚木さんは始めの方、香穂ちゃんの事『お前』しか言ってませんでした。
それに気づいて慌てて『香穂子』と後から言わせてみました・・・・。
はぁ・・・・痛い作品だなぁ・・・。
でもそれをUPするあたり、浅ましい奴です;


ブラウザの『閉じる』でお戻り下さい。