好きな人と一緒に居れば、その人の温もりを肌で感じたい。

それは男だけが思う訳ではなく、女にだって当然ある欲求。

香穂子は隣りに座る柚木をチラチラと盗み見しながら、一体どうやって切り出そうか迷っていた。

















とある日曜日、香穂子は柚木の部屋で別段なにをするでもなく寛いでいた。

彼は漆器のカタログを、香穂子は本棚から拝借した音楽雑誌のページをパラパラと捲っていく。

こうして過ごす時間も穏やかで好きなのだが・・・・・。

心の内は決して穏やかではなかった。

気もそぞろに時間を持て余すばかりの香穂子とは違い、柚木は本に集中している。

流石に邪魔をするのも気が引けて、どうしようかと考えあぐねた。

すると柚木は香穂子の様子に気付いて先に話し掛けてくれた。

「・・・どうした、退屈か?」

「いえ、そういう訳じゃないです・・・けど・・・」

歯切れ悪く言葉を濁す香穂子に、柚木は首を傾げる。

その瞳から視線を逸らせ、言いかけては飲み込む・・・を繰り返していると、

元より気の短い柚木は次第に苛立ち始めた。

「言いたい事があるならハッキリ言えよ」

これ以上先延ばしにしたり、途中で言うのを止めるとなると余計な争いになりそうだと判断して

香穂子はおずおずと口を開く。

「・・・・ぃ・・・す・・・」

小さな、蚊の鳴くような声で漸く言えた。

しかし。

「聞こえない」

努力も虚しく、あっさりと柚木に一蹴されて 『もう一度』 と促される。

あーもう、だから・・・・ッ!!

恥ずかしいのと、居たたまれない気持ちとで半ば自棄になり、正面から柚木に抱きついた。

「香穂子? 本当にどうしたの?」

柚木は怪訝そうに尋ねるが、身を離すという事はしない。

密着した身体を更に寄せて、二人きりの部屋にも関わらず香穂子はそっと耳打ちする。

『・・・抱いて、ほしいです・・・』

微かな声で囁くと、僅かに息を飲む音が聞こえた。

けれど、それ以外の反応はなくて不安に駆られ恐る恐る上を見上げる。

側には瞳を大きく見張って、驚いている柚木の顔があった。

彼のそんな表情を見たのは初めてで、思わず香穂子も言葉を失う。

だが、その沈黙は数秒と続かなかった。

「ひゃ・・・んんッ」

突然畳の上に押し倒されたと思ったら、性急に唇を重ねられた。

「や、待っ・・・ぅんっ・・・」

「待てない・・・」

短く即答されて、背けた顔を正面に戻され再び荒っぽいキスが始まる。

普段は真綿で包むような優しい口付けなのに、今日は違う。

全てが奪われてしまうのでは・・・というくらい激しいキス。

でも、全然嫌じゃなかった。

むしろ、こんなに求められて嬉しい・・・・。

目を瞑って快楽に酔っていると、名残を惜しむようにゆっくりと唇が離れた。

「・・・ん・・・ぅ・・・」

そっと瞳を開けると、目の前には柚木の美貌がある。

見つめ合えば、ふふっと彼が吐息を洩らす。

「お前から誘ってくるなんて初めてだよな・・・・すっごく嬉しい・・・」

その表情は本当に嬉しそうで、見ているこちらが恥ずかしくなる程だ。

「今日は帰さないから、そのつもりでね」

「えっ?」

「それと・・・優しく抱いてあげられないかも知れない・・・」

言うや否や、着ていたキャミソールを一気に上へ捲り上げられて腕に絡む。

下着のホックも手早く外され、胸が露わになった。

頂を軽く吸われて反対も指先で弄ばれる。

ビクリと反射的に身体を弾ませて、香穂子は高い声で啼く。

「お前が悪いんだぜ、俺を煽ったりするから・・・・」

柚木は徐々に下へ移動し、下着の上からそこを撫でる。

「やぁ・・・」

「ココも俺を誘ってるわけ? もう湿っているよ」

指摘されて香穂子の頬がカッと紅く染まった。

両脇の紐を解けば、それはもう下着ではなく唯の布と化す。

スカートも取り払うと香穂子は一糸纏わぬ身となる。

見られるのは未だに慣れない・・・・。

咄嗟に隠そうとした腕を柚木によって阻まれた。

「綺麗だよ、とても。 だから全部見せて」

そう言って香穂子の足を肩に乗せると、丁度柚木の場所からは本当に全てが見えてしまう。

「やだ、降ろして・・・!」

「それは無理だな」

大きく開脚させて、そこに柚木は顔を近づける。

「だめっ!」

香穂子の制止も虚しく、指よりも柔らかな舌でなぞった。

「あ・・・っ」

「もう、蜜でとろとろだよ・・・」

少し上にある尖りを飴玉のように転がせば、じわり・・・と甘い蜜が更に量を増す。

足を閉じたくても閉じれず、拒む手は今や柚木の後頭部に添えてあるだけ。

上昇する熱と共に羞恥心も溶けて消えていく。

「ふぁ・・・あっ、んっ・・・ああぁ・・・!」

くちゅくちゅと唾液と蜜の合わさった水音が大きくなる。

一旦柚木は顔を上げて、そこに指を一本挿入させた。

充分過ぎる程に濡れているそこは、抵抗もなくすんなりと収まる。

「あぁっ・・・」

根元まで埋まると、柚木はゆるゆると指を動かした。

何処が感じるのか全て把握しているクセに、そこは全然触れてくれない。

絶対に、わざとだ・・・・。

中途半端な刺激がもどかしくて、自ら動いて快感を得る。

「ふふっ・・・やっぱりお前は可愛いね・・・」

「・・・いじ、わる・・・っ!」

「本当はもっと焦らしたいんだけど、俺も余裕がないみたいだ・・・・」

言いながら柚木は指を抜いて、蜜が絡んだそれを口に含む。

そんな仕草がやけに色っぽくて見惚れていたら、今度は熱い楔が中に押し入ってきた。

油断していただけに、快楽も一入で・・・・・。

「あっ、やぁぁ――――・・・ッ!」

「・・・・まだ全然入ってもいないのに」

柚木は苦笑を交えて言うと、体重を乗せて全部埋め込む。

「んっ・・・ごめ、なさ・・・・っ」

「別に謝らなくて良いよ。 その分、俺に付き合ってもらうから・・・・」

チュッ、と軽いキスを額に落として柚木は動きを再開させる。

「せん、ぱ・・・っ! あ、あっ・・・」

初めから激しい突き上げに、香穂子は柚木の背中に腕を回して縋りつく。

無意識に中のものを締め付けて、柚木は耐えるように柳眉をひそめる。

「・・・・っ、香穂子―――」

ズンッ、と一番奥深くを突かれ香穂子は身を捩った。

「あっ・・・ああぁ・・・・!」

お腹に温かいものを感じ、香穂子も二度目の絶頂を迎える。

「は・・・、はぁ・・・はぁ・・・っ・・・」

肩を上下に揺らして息を整える香穂子の頬を柚木は愛しげに撫でた。

汗で張りついた前髪を指先で払い、キスの雨を顔中に降らす。

「・・・香穂子・・・」

真摯な瞳で見つめられ、香穂子はそっと瞼を閉じる。

けれど、待っていた甘い口付けは訪れず・・・・・。

「まだだよ、香穂子」

「え?」

「まだ、お前が足りない。 俺をその気にさせた責任はちゃんと取ってもらうぜ?」

「そんな・・・っ、もう無理です!」

痛む腰を庇いながらも、慌ててその場から逃げ出そうとするけれど直ぐに柚木の魔の手に捕まる。

再び組み敷かれた香穂子は抵抗もままならず、あっさりと柚木のペースに嵌ってしまった。





――― 翌日。

空がうっすらと白み始めた頃、漸く香穂子は柚木に解放された。

虚ろな眼差しで、同じ布団の隣りに眠る柚木を恨めしげに睨む。

「もう、二度と・・・自分から誘うもんか・・・・ッ!」

枕に顔を埋めながら、力なく自分自身に固く誓う香穂子であった・・・・・。










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★あとがき★

唐突に書きたくなった、ただヤッてるだけ〜な話。
・・・・欲求不満なのか、自分?(汗)
まぁ、最近エロ書いてなかったし。
うん。 そういう事にしとこう・・・。