Revenge





香穂子と俺が付き合い始めて、もう半年が過ぎた。

香穂子は相変わらず俺の可愛いオモチャとなってくれてて・・・・・正直、少し油断してたかも知れない。

どんなに従順なペットも時には飼い主に牙を剥く事を――――。









「んっ・・・先輩・・・・も、やぁ・・・っ」

誰も居ない音楽科の教室で、香穂子は机の上に組み伏せられていた。

柚木はそれを上から見下ろし口元には笑みを浮かべながら香穂子の制服を少しづつ乱していく。

膝丈のスカートを太腿まで捲り、すいっと下着の上から敏感な花の芽を撫でる。

「ぁん・・・っ」

香穂子はその刺激にビクリと身を震わせ、甘い嬌声をあげた。

「口では嫌だって言ってるけど、お前のココは悦んでいるみたいだぜ・・・・?」

柚木は耳元で囁くと今度は下着をずらして直接その芽を弄る。

香穂子は声を洩らさないようにきゅっと唇を噛み締めて口を手で抑えた。

「そうそう。 そうやって声を我慢しないと、防音されてないこの教室に誰か来るかもな。 生憎、今は鍵も掛かってないしね」

クスクスと笑う柚木を香穂子は恨みがましそうな瞳でキッと睨む。

それが逆に柚木の嗜虐心を煽っている事に香穂子は気付かない。

「・・・・馬鹿な子だね」

柚木は甘さを含む掠れた声で呟くと、性急に香穂子の中へ自身を押し込んだ。

「っああァ――――・・・・!」

充分に準備されていたそこは何の抵抗もなく柔軟に柚木を受け入れる。

容赦なく突き上げられ、もう声を抑える術など香穂子にはなかった。













その後、何時ものように柚木の車で一緒に下校するが・・・・・当然の事ながら香穂子の機嫌は最悪に悪かった。

車自体が広いため香穂子と柚木の間はかなりのスペースがあり、香穂子は窓の外を見つめたまま此方を見ようとしない。

柚木が機嫌を取ろうと話しかけても無視を決め込み、一切反応はなかった。

これ程までに頑なな態度をとる香穂子は珍しく、柚木も対処が解らず辟易する。

そんなに教室での行為は嫌だったのか・・・・と反省しながら、もう一度香穂子に話しかけた。

「もうお前の嫌がる事はしないから、機嫌なおせよ・・・・。 ね、香穂子?」

「・・・・・・・」

相変わらずそっぽを向いたまま反応しない香穂子に溜め息を吐きながら、柚木は最後の手段に出る。

本当はあまり使いたくなかった手だが、このまま香穂子に無視され続けられるよりはマシだろう・・・・。

柚木は一度深呼吸してから、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「・・・・・・じゃあ、今日一日はお前の言う事を聞いてあげるって言ったら機嫌は直る?」

「・・・・それ本当ですか?」

漸く口を開いた香穂子にほっとしながらも柚木は頷く。

「・・・何でも? どんな事でも聞いてくれます?」

疑り深そうな瞳を真摯に受け止め、再び頷いた。

「ああ、ちゃんと聞くよ。 ・・・・で、香穂子の願い事って何?」

「今日・・・家族が皆家にいないんです。 それで、あの・・・・」

言い難そうに視線を揺らめかせる姿を見て、柚木は香穂子が何を言いたいのか直ぐに解った。

「それは泊まってもいいって事? それが香穂子の願い事?」

コクリと頷くのを確認して、柚木は頬を緩める。

「そんな頼みならいつでも大歓迎だよ」

そう囁いて香穂子との距離を縮め、柚木は香穂子の唇にチュっと軽く口付けた。

「仲直りのキス、な・・・?」

「はい!」

香穂子も満面の笑みで柚木に口付ける。

思えば、香穂子のその笑顔は妙に晴れ晴れとしていて多少の疑問を覚えるものだったけれど

今の柚木は香穂子の機嫌が戻った事に安心し、そこまでの注意がいかなかった。











「お邪魔します」

「ふふ、私以外に家族は居ませんよ?」

律儀にも玄関先で挨拶する柚木を振り返り、香穂子は微笑する。

「知ってるよ。 でも最低限の礼儀として当然だろ」

「そうですね。 あ、先輩は先に二階の部屋へどうぞ」

「・・・ああ」

柚木は手前の階段を上がり、見慣れたその部屋へ入る。

ふと机に目が行き、その上には二人で撮ったツーショットの写真と大切そうにファイリングされた楽譜があった。

ファイルを手に取るとそれは『愛の挨拶』の楽譜だった。

柚木にとってこの曲は掛け替えのないものであり、香穂子もまた同じ想いだったと実感して胸がじんわりと温かくなる。



「柚木先輩、お待たせしました〜」

ガチャっと扉の開く音がして香穂子がお菓子とお茶を運んできた。

「ありあわせの物ですみません・・・」

「どうぞお構いなく。 それじゃ、頂きます」

琥珀色した紅茶のカップを手に取り、そっと口付ける。

その様子を香穂子は、やや緊張した面持ちでじっと見つめた。

「・・・・どうした、俺の顔に何かついてる?」

柚木は首を傾げて尋ねると、香穂子は慌てて否定する。

「あっ、いえ! 別に何でもありませんっ」

挙動不審な香穂子に疑問を感じながらも、それはお茶やお菓子の味を気にしての事だろうと判断し

『美味しいよ』と言って今度はお菓子をつまむ。

「そ、そうですか・・・・良かった」

香穂子は小さく苦笑して自分も紅茶を一口啜った。

それから暫く他愛のない会話をしていたが、柚木はだんだん自分の身体に違和感を覚える。

何もしていないのに動悸は激しくなり、呼吸も浅くなった。

下肢が熱く疼いて主張し始め、自分が一服盛られた事に気付く。

「くっ・・・香、穂・・・・・お前・・・!」

「効果が出るの意外と早いんだ・・・・。 お姉ちゃんに貰った薬だからよく解らなくて」

嬉々として話す香穂子を残った理性で睨み付けると、香穂子は更に笑顔になった。

「さぁ、柚木先輩。 ベッドで横になって下さい」

語尾にハートマークが付きそうな口調で香穂子は後ろのベッドを指で示す。

「何でっ・・・」

「先輩に拒否権はありませんよ。 言ってくれたじゃないですか、何でも言う事聞いてやるって」

「・・・・・・・」

確かに、言った。

あの時はただ香穂子の機嫌を取りたくて必死だったが、今は何故あんな事を言ってしまったのかと後悔する。

その柚木の心情を悟ったのか、香穂子は悲しげな表情になり柚木に言い募った。

「・・・・・それとも、先輩は私との約束破るんですか・・・?」

そんな瞳で見られると何も言えなくなる。

柚木は心の中で舌打ちし悪態を付く。

「・・・っ勝手にしろ!」

ドサリと乱暴にベッドで横になり、それを見て香穂子はパッと表情を明るくした。

「ふふ、勝手にします。 そうそう、先輩は私に触れたらダメですよ」

「・・・・理由は?」

「今日は私だって怒ってるんですよ? 嫌だって言っても止めてくれなかったし。 だから仕返しです!」

そう言って香穂子は次々と柚木の制服を脱がしにかかる。

上半身全て脱がし終えた所で、今度はベルトに手を掛けた。

「俺だけ脱がせてお前は服を着たままなの?」

「先輩も今日脱がなかったから、これでおあいこですよ」

「・・・・・あっそ」

それを聞いて柚木はもの凄く詰まらなそうな顔になった。

ズボンと下着も取り払い、香穂子は今まで直視出来なかった柚木の裸体に思わず感嘆する。

綺麗に整った顔立ちは女性的なイメージを与えるのに、適度に筋肉の付いた肢体は立派な男性そのものだ。

まるで美術館にある彫刻のようだと思わせる程、柚木は魅惑的だった。

さらに視線を下げると・・・・・既に勃ち上がりドクドクと脈を打つそれが目に入る。

「先輩、辛い・・・・?」

香穂子は柚木のものを軽くキュッと握る。

「・・・・・っ!」

途端、柚木は息を詰めて欲望を放った。

けれど精を放ったあとも萎える事はなく、未だに反り勃ったままビクビクと震えている。

香穂子はソレを愛しげに撫で上げると今度は躊躇なく口に含む。

その行動に驚いた柚木はベッドから勢いよく上体を起こし、香穂子の頭をそこから離れさせようとする。

「香穂子、そんな事しなくていいっ!」

けれど、柚木の制止を無視して香穂子は柚木のものをチロチロと愛撫し続けた。

薬の所為で過敏になっているのと、視覚からの二つの刺激で柚木は再び昇り詰める。

「うあぁ・・・っ」

香穂子の喉がコクンと上下に動いたのを見て、柚木はぐったりと身を預けた。

いくら薬の効果もあったからと言っても早々に二度も出して、ましてやあんな声を出すなんて・・・・・・。

柚木は自己嫌悪に陥り、居たたまれない気分になる。

「・・・・もう満足だろ・・・」

シャツを取ろうとして身を起こしかけると香穂子が先にシャツを取り上げた。

「まだダメです。 寝てください」

「そろそろ、いい加減に・・・・・っ!?」

柚木は香穂子を睨み、文句を言いかけた言葉を咄嗟に飲み込む。

「男の人はここの奥に気持ちのいい場所があるんですよ。 知ってました?」

そう言って香穂子の濡れた指が柚木の孔へと侵入する。

「う・・・・っ」

柚木は異物感から漏れそうになる声を抑えるが、そんな所に指を挿れられたままでは下手に身動き出来ない。

結局は香穂子のなすがままになり、それが柚木の高いプライドをちくちくと刺激する。

本当ならば無理矢理にでも止めさせたい所だが、それは同時に香穂子を傷つけてしまう。

柚木にとって自分のプライドより、香穂子の方がずっと大事なのだ。

眉根を寄せて必死に耐えていると、香穂子の指はある一点を掠めた時、背中にゾクリと悪寒にも似た快感が駆け抜ける。

「・・・・・ここですか?」

確信を得た香穂子の指がもう一本増えて、前立腺を集中して攻めた。

「ああぁ・・・っ!? ・・・やめ、ろ・・・・っ」

再び元気を取り戻した柚木のものも香穂子は愛撫を再開し、柚木の余裕もなくなる。

「柚木先輩、気持ち良い・・・・?」

香穂子の親指が先端を回すように撫でて、じわりと熱い雫が零れた。

その間にも前立腺を刺激し、指はいつのまにか三本に増えている。

「先輩、良いの?」

また香穂子は同じ質問をして柚木をじっと見下ろす。

「んく・・・・はっ・・・良い、から・・・・っ・・・はぁ・・・もうっ・・・・」

出る――という所で、香穂子は全ての手を止めた。

中途半端に高められた熱が行き場を失くし、柚木に一層の苦痛を与える。

新手の嫌がらせかと思い仰ぎ見れば、香穂子は僅かに俯いてもの欲しそうな瞳をしていた。

その表情を見て悟った柚木は荒い息の中ニヤリと口角を上げる。

「・・・香穂子も・・・・俺が欲しいんでしょう・・・・?」

「・・・・・・・・・はい」

視線を彷徨わせて悩んだ挙句に香穂子は素直に白状した。

本当はここで焦らして意地悪でもしたい所だけど、今は柚木自身も余裕などない。

自分も香穂子が欲しいのは同じなので優しく手招きをする。

けれど・・・・・・・・・。

香穂子が上に乗って完全に繋がった事を確認すると、柚木はグルリと体勢を入れ替えた。

何が起きたか解らず固まっている香穂子を見下ろして柚木は悪辣に微笑む。

「随分と好き勝手な事をしてくれたね・・・? このお礼はきちんとして貰うから覚悟しろよ」

「ひっ・・・」

慌てて逃げようとする香穂子の腰を引き戻して柚木は容赦なく最奥を突く。

「今日はこの薬の効果が切れるまで寝かせるつもりはないからな」

「んああぁ・・・・っ! や、約束とちがっ・・・・」

「黙れよ」

香穂子の抗議をキスで塞ぎ、徐々にそれは深くなる。

離れてはまた口付けられ、息継ぎが思うように上手く出来ない。

苦しくて柚木の背をドンドンと叩くと漸く唇を解放された。

はぁっと大きく息を吸うと柚木はクスリと小さく笑み、耳を甘噛みしながらそっと囁く。

「二度と変な気を起こさない様に、今夜はたっぷりと躾けてお前の身体に解らせてあげるよ・・・・」

こうして香穂子の仕返しは柚木の形勢逆転により失敗に終わった。












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★あとがき★

柚木さんの男前受け・・・・になってたでしょうか??(汗)
女々しくならないように気を付けたつもりなのですが・・・・・・。
でも、彼はやっぱりSなので結局はこれに片付きますけどね(笑)
書いててすっごく楽しかったです!! また書けたらいいなぁ。