お仕置き








午後十二時半をまわった頃、柚木は屋上に続く階段を足早に登っていた。

昼休みもじきに終わる時間帯、弁当を持って。

何故かと言うと、お昼を香穂子と食べるために・・・・。

けれど、こんな時間になってしまったのは先刻まで生徒会の手伝いをしていたから。

4限目が終了して暫く経たない内に校内放送で呼ばれたのだ。

だから香穂子に伝える術などなく生徒会室へ向かわざるを得なかった。

ちらり、と時計を見るとあと二分もしない内に次の授業が始まってしまう。

流石に待っている筈がない、と解っていながらも何処かで期待してしまう自分も居る。

申し訳ない反面、待っていて欲しいと・・・・・。

階段を登りきって、ギィと屋上の扉を開けた。

心地よい日差しと、春一番の強い風が吹いて髪が靡く。

辺りを見渡すと誰もいなかった。

「やっぱり、ね・・・」

こんなに急いできた自分が滑稽すぎて自嘲する。

踵を返してドアノブに手を掛け―――ようとしたが、頭上から声が聞こえた気がした。

本当に小さな声だったので聞き間違いかと思ったが、確かにあれは香穂子の声だ。

上を見てもクルクルと回り続ける風見鶏しか見えない。

ここで突っ立っていても仕方ないので、柚木は入り口の右側にある階段を登って二階に上がった。

「・・・・!」

やはり、二階に香穂子は居た。

隣に置いてある弁当の包みは開かれた形跡がないので香穂子も食べずに柚木を待っていたのだろう。

「・・・香穂子?」

同じ体制のまま動かない香穂子を訝しんで近づくと静かな寝息を立てて眠っていた。

きっと、柚木を待ち疲れて眠ってしまったのだろう。

このまま眠らせておく訳にもいかず、肩を少し揺すって起こす。

「ほら、香穂子・・・起きろ。 風邪引くぞ?」

「・・・ん・・・」

香穂子は軽く身じろぎしただけで、起きる気配はない。

完全に熟睡している様子で、こうなってしまってはなかなか起きないのだ。

もう何度も朝を共にしているので香穂子の寝起きの悪さは身に染みている。

暫く途方に暮れていたが、やがて面白い事を思いついた。

柚木はニヤリと口角を吊り上げて悪辣な笑顔で香穂子の耳元に囁く。

「香穂子・・・? 早く起きないと、悪戯しちゃうよ?」

「・・・・・」

反応はない。

柚木はクスリと小さく笑って、香穂子に啄ばむ様なキスをする。

それでも一向に目覚める様子もなく、柚木は段々香穂子の無防備さが心配になってきた。

最近、香穂子の人気が上昇してきて柚木は気が気ではないのだ。

もし、眠っている香穂子を他の男が見つけたら・・・・?

男の理性など、たかが知れている。

何かあってからでは遅いのだ。

「・・・ここら辺で解らせてやる必要があるな」

柚木はもう一度、香穂子にキスをして空いている方の手でスカーフを抜き取る。

制服の下から手を中に入れて、やんわりと胸を揉みしだく。

「・・・っ」

ピクリ、と反応を示したがそれでも起きない。

香穂子の制服のボタンを全て外して肌蹴させ、器用に下着のホックまでも外した。

その白い肌には、無数の紅い花びらが散っている。

柚木はそれを満足そうに眺めて、跡を辿るように口付けた。

指先は胸の頂きを弄り、唇は徐々に降りていく。

「ふ・・・ぁ・・・」

寝息に交じって香穂子の甘い声が零れる。

気を良くした柚木はもう片方の果実を口に含んだ。

「ん、あぁっ・・・」

香穂子の啼く声は可愛くて、それを聴いて良いのは柚木だけの特権。

そう、この反応が男を悦ばせる。

けれど、それは自分以外の男も例外ではない・・・。

他の男が香穂子に触れている姿を想像してしまい、先程の気分が一気に急降下する。

舌や歯で甘噛みするとビクン、と大きく身体を震わせて香穂子が目を覚ました。

「・・・っ!? せ、先輩! 何して・・・っ」

柚木は一旦、口を離して不機嫌な瞳のまま告げた。

「お仕置き、だよ」

そう言って再び尖りきった果実を嬲る。

「やぁっ、何の・・・?」

訳の解らない香穂子は半泣きになりながら柚木に尋ねた。

けれど、柚木は香穂子を攻め立てるだけで質問には答えない。

下着をずらして柚木の指先が一番敏感な突起に触れる。

「あんっ!」

そこは既に濡れていて、触っただけでくちゅっ、というやらしい音が聞こえた。

「・・・何、寝てても感じるんだ? 香穂子は」

「やだっ・・・」

恥ずかしさに顔を俯けると、その顎を掬われて柚木と視線が合う。

「意識がなくても感じるって事は、相手が誰でも感じるんじゃないのか?」

その言葉に香穂子の瞳が大きく見開かれる。

「な・・・んで・・・・」

つう、と香穂子の目から一筋の涙が流れた。

けれど、柚木の視線は冷ややかなままで何も答えてはくれない。

「ち、がう・・・違うっ! 私には、柚木先輩だけ・・・・っ!!」

香穂子は首を大きく横に振って否定し続けた。

「じゃあ、証明してみせろよ」

そう言うと、柚木は香穂子を押し倒してキスをした。

普段の包み込むような甘いキスではなく、何もかも奪い尽くすような激しいキス。

「んっ・・・んん・・・はっ、んん・・・!」

息もままならず香穂子は眉をひそめるが、それでも柚木の口付けに応えていた。

そっと唇を離すと銀の糸が二人を結んだ。

「・・・それだけ?」

柚木は先刻とは打って変わって面白げな瞳で唆す。

香穂子は真っ赤な顔で柚木の羽織っているブレザーを脱がせて、ベストのボタンを外していく。

次にネクタイを外しにかかるが、なかなか上手くいかない。

暫く苦戦していると柚木の手が重なって、いとも簡単にスルリと解けた。

「・・・ありがとう、ございます」

別の意味で恥ずかしくて、視線を背けながらお礼を言った。

「どういたしまして」

クスクスと小さく笑いながら柚木も答えた。

香穂子は再び視線を戻して、シャツのボタンを外しにかかる。

もう下に衣類はないので素肌がどんどん露出されていく。

「・・・・・っ」

パサリ、とシャツを肩から落とすと柚木の男らしい上半身が露になった。

次にやるべき事は理解できているが、身体が動かない。

「せん、ぱい・・・」

困ったように見上げると、柚木も『仕方がないな』と言う顔で香穂子を見た。

経験のない香穂子にはどうしたら良いか解らないのだろう。

「ちゃんと教えてやるから、指示に従って」

柚木は自分で前をくつろげた。

「先ずは、少し舐めてみて」

香穂子は言われたとおり、舌で先端をペロリと舐めた。

「で、まだ口に含まなくて良いから、飴を舐めるみたいにやってごらん」

先端を舐めていた舌を裏筋に這わせ、下から上に舐め上げた。

「・・・っ」

すると、柚木が息を詰めたのが解る。

感じてくれている、と思うと嬉しくて一生懸命に頑張った。

次第に柚木の息も弾んできて、その頃には香穂子も柚木の指示なしでも出来ていた。

「・・・も、いいよ。 こっちに来て跨って」

香穂子は名残惜しげに柚木を解放すると、言われた通り柚木の上に跨る。

指先で香穂子の秘所に触れると、さっきよりも蜜が溢れていた。

「俺のを舐めてて、お前も感じたの・・・?」

耳元で卑猥な事を囁かれ、羞恥に顔を染めたけれど素直に頷く。

「可愛いね・・・香穂子。 それじゃ、そのまま腰を落として」

「んっ・・・ああぁっ!」

準備はきちんと出来ていたものの、やはり始めはキツかった。

けれど、それを過ぎれば後は難なく収まってしまう。

「あっ、奥・・・に・・・・っ」

いつもと体制が違うせいか、柚木を最奥にまで感じてしまい―――気持ちがいい。

だが、柚木は一向に動いてくれないので物足りない。

「・・・あ、ずまぁ・・・・」

甘い声で下の名を呼び、唇にそっと触れるだけのキスを落とす。

これは香穂子がおねだりする時の仕草。

もちろん、それら全ては柚木自身が香穂子に教えた事。

何も知らない無垢な身体に快楽を教えたのも柚木だ。

―――いつもなら、その誘いに乗ってやる所だけどね・・・・今日は・・・。

「欲しいなら自分で動けよ。 それくらい、出来るだろ?」

わざと突き放したような口調で言ってやる。

何故なら、これはお仕置なのだから。

それに対して香穂子の表情にはもう絶望の色はなく、あるのは恍惚とした女の顔だった。

香穂子が腰を上げると、ぬちゃ・・・という濡れた音が響く。

楔が抜けてしまうギリギリまで腰を上げると、今度は勢いよく腰を落とした。

「んぁっ! やっ、ああぁん・・・」

香穂子はその動作を繰り返して柚木の上で淫らに踊り、後ろではその昂ぶりを締め付ける。

「・・・っく」

強すぎる香穂子の締め付けに、思わず柚木も小さく呻いた。

その反応に今度は香穂子が微笑む。

「梓馬も・・・もっと私を感じて・・・!」

「ああ・・・一緒に、イこう・・・っ」

言葉と同時に柚木も動き出す。

香穂子の腰を固定して、最も弱い部分を狙い擦りつける様に最奥を穿つ。

「あぁ・・・っ! ああっ、も・・・ダメぇっ イッちゃ・・・イッちゃうぅ・・・っ!」

「俺も、もう・・・!」

更に激しく腰をグラインドさせると、香穂子はたまらずに背を反らした。

高い悲鳴を上げて香穂子が達すると、柚木もほぼ同時に欲望を放った。






*********






香穂子が解放されたのは結局、放課後になってからだった。

午後の授業もサボってしまって本当は怒りたいのだが、今は柚木の機嫌の方が気になる。

恐る恐る表情を窺い見ると、先程の冷たい感じはしなかった。

「・・・もう、怒ってないんですか?」

「何? もっと虐めて欲しかった?」

「断じて違いますっ!」

ニヤリ、と意地悪げに笑う柚木に香穂子は精一杯否定する。

けれど、心の中では柚木がもう怒っていない事に心底ホッとした。

これで何故自分が突然あんな目に遭ったのかが聞ける。

「何でお仕置きされたのか、まだ解らない?」

柚木はまるで香穂子の心を見透かしたように疑問を言い当てた。

ビクビクしながら頷くと、今度は柚木が溜め息をつく。

「・・・・お前が余りにも無防備だから、だよ」

「―――は?」

意味が解らない、と言うように香穂子は柚木を凝視する。

そんな香穂子を横目に柚木はもう一度嘆息した。

「お前は唯でさえ隙があり過ぎるから、それを解ってもらう為のお仕置きだよ。
 ・・・・それと、他の奴への牽制。 お前はもう俺のモノなんだって言う、ね」

真顔で言われると照れてしまい、香穂子は少し紅潮した顔を隠しながら柚木に言った。

「・・・・そんな事、しなくても。 それに、それを言うなら先輩にも非はありますよ!
 元はと言えば、先輩がお昼の時になかなか来ないから・・・・!」

どうだ、と言わんばかりに香穂子は柚木に言い返す。

まさか言い返されるとは思っていなかった柚木は初めこそ驚いたが、ふとその表情を悪辣なものに変えた。

「・・・それもそうだな。 じゃあ、ご褒美をやるよ」

そう言って、柚木は再び香穂子に覆い被さった。

「せ、先輩っ!?」

香穂子は柚木に非難の声をかけるが、当の本人は意にも介さず、香穂子の首筋に新しい跡を付ける。

一応、形だけ整えた制服は柚木によってまた肌蹴られた。

「ご、ご褒美って・・・これはお仕置きなんじゃないんですかっ!?」

「どっちでも良いだろ、別に」

「そんなぁ・・・!」

香穂子はなす術もなく、再度柚木に啼かせられる羽目となったのだった。





















*************

★あとがき★

うーわー・・・、とうとうやっちまいました。
お口でご奉仕(汗)
ネオロマでこれは有りなんだろうか・・・、と真剣に悩んだ末、従姉妹にも励まされ(?)書いてしまった。
だって、柚木さんはSだしー・・・。
だけど、うちの柚木さんは香穂ちゃんを溺愛してて、ちょっと(いや、かなり)ヤキモチ妬きなんですっ!
だから彼がSなのも香穂ちゃんを愛する故なのよ・・・vv
なーんて、自分でフォローしてみたり。
ああぁ・・・皆様の反応が気になる〜・・・・。
宜しければ、書き込みしてやって下さいませ(苦笑)


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