休日の朝。 香穂子は柔らかな日差しと、小鳥の囀りで目が覚めた。

一番最初に目に入った天井は、木目が綺麗に並んでいる上品なもの。

自分の部屋の天井とは違くて・・・・・でも、香穂子にとって馴染みのある部屋には違いなかった。








** 遅く起きた 朝 **








ああ、そうか・・・・昨日は・・・・・。


寝ぼけた頭は、漸く思考がハッキリし始めた。

しかし、わざわざ考えなくとも何も見に纏っていない自分の姿を見れば、ナニがあったか一目瞭然だろう。

それに身体だって、未だジンジンと甘く疼いている。



――― って、何考えてんのよ! 私は!



香穂子は紅く頬を染めながら、その思考を断ち切るように壁の時計を見上げた。

針は8時を指している。



「柚木先輩は、お風呂かな・・・」



この時間は大抵シャワーを軽く浴びているから、今回もそうだろうと疑わなかった。

しかし。



「なにボケてるの。 俺はここに居るだろ」



少し呆れた声の方を見れば、寝巻きの襦袢を着崩した柚木が確かに居た。



「えっ、先輩・・・いつからそこに・・・?」

「・・・・。 お前、それ本気で言ってる?」



今度こそ、柚木は心底呆れた顔になる。



「ずっと隣りに居たよ。 気付かない方がどうかしてるぜ」

「す、すみません・・・・。 だって、この時間は柚木先輩いつも居ないから・・・・」

「ああ、そう言えばそうだったね。 まぁ、今日は何となく」

「・・・何となく、ですか?」



キョトン、と 不思議そうに香穂子は小首をかしげた。

柚木はその表情を見て、ふわりと優しく笑う。

不意に見せられた柚木の穏やかな笑顔に、心臓は大きく高鳴った。



「そう。 何となく・・・今日は、お前を一人で目覚めさせたくなかったんだよ」



―――― 反則だ、と 思う。


いつもは意地悪なクセに、突然こういう事をさらっと言う・・・・。

だから、この人から離れられない。

香穂子も自分の想いを告げようと視線を合わせた、その時。



「・・・・っくしゅ!」



一つのくしゃみが出た。

このタイミングでくしゃみなど・・・・今日ほど自分を呪いたい日はない。

香穂子は自己嫌悪に陥るが、柚木は平然としていた。

きっと意識して言った言葉ではないからだろう。



「ああ、寒いか? 今着るものを持って来てやるよ」



そう言って柚木は腰を上げる。

自分に背を向ける彼を見て・・・・ちょっとだけ寂しく感じた。



「・・・・柚木先輩!」



思ったら勝手に身体が動いて、柚木の襦袢の裾を掴んでいた。

案の定、彼はとても驚いた顔をしている。



「・・・香穂子?」

「行かないで下さい・・・私なら大丈夫ですから・・・」

「鳥肌まで立ててるヤツが大丈夫な訳ないだろ」

「・・・でも・・・」

「――― 仕方ないな・・・」



大きな溜め息を吐いて、柚木は香穂子の方へ戻ってきた。

そして再び布団の中で横になると、隣に座っていた香穂子も一緒に引きずり込む。



「わっ・・・」



驚いたのも一瞬で、冷えた身体を抱き寄せられた。



「柚木先輩っ?」

「コラ。 暴れないの」



やんわりと窘められて、香穂子はピタリと動きを止める。

と、同時に唇まで硬く引き結んだ彼女を見て柚木は小さく笑い、その場所に触れるだけのキスをした。

それはまるで 『いい子だね』 と、褒めるかのように。



「温めてやるよ。 俺が直々に、ね・・・」

「ふふっ・・・また眠っちゃいそう」

「そうだね。 今日はうるさい家族も居ないし、たまにはそれも良いかもな」



香穂子が瞳を閉じると、柚木がほんの少しだけ抱き締める腕の力を強めた。

そんな些細な事が、どうしようもなく幸せだと感じる。




―――― 二人の穏やかな休日は、まだ始まったばかりだ。










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★あとがき★

アニメの柚木さんに触発されて、突発的に甘〜〜〜い話を書きたくなりました。
ふぅ、満足・・・・! (悦)
私的に、情事後の翌朝が一番ラブラブだと思いますvv
アニメも、こういう展開にならないかなぁ・・・・(無理)