「雨、止みませんね・・・」
「ああ。 こうしてても仕方ないな」
今日は天気もよく晴れ渡っていたが、いきなり予期せぬ雨に降られて雨宿りをする二人。
折角のデートだというのに、こうしていては時間の無駄というもの。
「ここからなら私の家が近いですけど、そこまで走りましょうか?」
「・・・・そうする他なさそうだね。 あ、走る前にお前はこれを被って」
「それって柚木先輩の上着じゃないですか、ダメですよ!」
「いいから。 ほら、走るよ」
「あっ・・・先輩!」
先に走り出した柚木に上着を返す事も出来ず、香穂子はそれを被って追いかける他なかった。
** 身 も コ コ ロ も 温 め て **
「柚木先輩、上着ありがとうございました。 お風呂沸かしましたから入って下さい」
「悪いね。 お言葉に甘えて後で入らせてもらうよ」
「今です! 今度は私の意見を通しますからね、柚木先輩の方が濡れているんだし」
「お前、風邪引きやすいだろ。 俺は平気だから先に入ってこい」
「だけど・・・上着を借りたお礼に、今度は柚木先輩がお風呂を先に使ってください」
会話は風呂を先に譲り合って平行線のまま。
こういう時の香穂子はとても頑固なのだと柚木は知っていた。
しかし、このままだと本当に風邪を引かせてしまうかも知れない。
柚木は考えた末、良い方法を思い付いた。
「それなら一緒に入ろうか」
「えっ?」
その言葉に香穂子は瞳を大きく見開いた。
柚木はこの隙をついて、ふわりと香穂子の身体を横抱きにする。
「ちょ、ちょっと・・・柚木先輩っ」
「暴れると落とすぞ」
言葉の端に僅かな 『本気』 を感じ取って香穂子は一切の動きを止めた。
「良い子だね。 はい、到着」
そう言って柚木が降ろした場所は洗面所。
戸惑っていると服のボタンに手が掛けられた。
「自分で脱ぎますから・・・っ」
「とろいからダメ」
その言葉どおりテキパキと事務的に服を脱がせられ、何となく悔しさを感じる。
残るは下着のみとなった時、今度は香穂子が柚木の服に手を掛けた。
「じゃあ、私が先輩の服を脱がせてあげますよ」
「いいけど・・・その代わり、ちゃんとやれよ?」
「・・・? 解りました」
ちゃんと、の部分を強調されて香穂子は首を傾げながら頷く。
この時は深く考えなかったけれど、柚木は少し意味深に微笑んだ。
シャツ、ズボンも脱がせ瞳で 『終わった』 と合図する。
だがそれに対して柚木は 『まだだ』 と返事をかえした。
「まだ一枚残ってるでしょう。 ちゃんとやれって言ったばかりなのに」
「えっ・・・」
途端に香穂子は顔を真っ赤に染める。
下着は脱がされなかったので、てっきり自分も脱がさなくていいと思っていた。
「寒いだろ、早くして」
促されて香穂子は観念し、おそるおそる最後の布を下へさげる。
視線は前を向く勇気までは持てなかった為、横の壁ばかり見つめていた。
脱がし終えると、柚木の行動は早かった。
腕を引かれ倒れ込むと抱き締めるような格好で、背中にあるホックを外される。
それを床に落とされ、香穂子は慌てて胸を隠す。
「別に今更隠さなくても・・・」
耳元で可笑しそうに笑う柚木の吐息がくすぐったい。
こうして互いの素肌をさらす事は初めてではないが、香穂子は未だに慣れなかった。
それなのに柚木はいつも余裕で、それが何だか悔しい。
上目で睨みあげると、柚木はふと悪辣に微笑む。
「さぁ、これも脱ごうか」
そう言って柚木は香穂子のショーツに手を掛けて、その場にしゃがみ込む。
この体勢で下着を脱がされたら、自分の一番恥ずかしい場所を彼の眼前に晒す事になってしまう。
香穂子はせめてもの抵抗で足をぴったりと閉じる。
「・・・香穂子。 これじゃあ脱がせられないよ?」
下から見上げられても香穂子は首を横に振った。
柚木は 『仕方がない・・・』 とでも言うように溜め息をつき、突然香穂子の太腿をするりと撫で上げる。
「ひゃっ・・・」
驚きから変な声が出て、思わず閉じていた足が少し緩む。
その隙を柚木が見逃す筈もなく、さっと足首までショーツを引き落とした。
赤い顔を更に紅潮させた香穂子は抗議しようと口を開く。
だが、その前に一つのくしゃみが出た。
先程の雨に濡れた身体は完全き冷え切って、更に何も身に纏っていない所為で鳥肌まで立ち始める。
それまで意地悪そうに笑っていた柚木も直ぐに立ち上がった。
「ああ、ここで遊んでいる場合じゃなかったね。 風呂へ入ろうか」
その言葉に香穂子も異論なく、コクリと頷いた。
**************
バスルームに入って柚木はシャワーを、香穂子は湯船に浸かる。
冷えた身体には沸かしたての湯は少し熱く感じるが、やはり心地が良い。
ふー、と大きく息をついて脱力していると後ろからそっと柚木が入ってきた。
それほど大きくはない浴槽に二人では密着せざるを得ない。
背中を向いているとはいえ、恥ずかしくて落ち着かなかった。
「えと・・・じゃ、じゃあ今度は私がシャワー使いますね!」
「まだじっとしてろよ」
そう言われ、後ろから抱きすくめられた。
すぐ傍に柚木の吐息を感じて香穂子は石のように固まる。
その反応に柚木は再びクスリと笑み、手は悪戯に動き出す。
逃れようと身を捩れば、腰に何かが当たった。
「あ・・・」
「ん、どうした?」
その 『何か』 が解ってしまい、香穂子は躊躇いがちに口を開く。
「あの・・・先輩のが、当たって・・・・」
「ああ、わざとだからね」
「な・・・!」
「そう言うお前も、濡れてるけど?」
柚木の手が足の間を撫で、ビクンと身体が跳ねた。
掴んで阻止しようとしても触れられる度に力が抜けてしまう。
「ほら、また溢れてきた」
「・・・ぁっ、お、お湯ですっ」
「お湯? こんなヌルヌルしているのに・・・?」
香穂子はコクコクと頷く。
こんな嘘が柚木に通用するとは思っていないけれど、そうでも言わないと居たたまれなかった。
柚木はそんな香穂子の必死な心境を知ってか知らずか、ますます意地悪に囁く。
「じゃあ、指が簡単に入っちゃうのもお湯のせい?」
「そ、そう・・・っ」
「へぇ、それは大変だね。 今かき出してやるよ」
「え? あ、やぁ・・・!」
入り込んできたと思った指が今度は動き出す。
それは 『お湯をかき出す』 というには遅すぎる動作だ。
中を探るような指に耐え切れず、香穂子は抑えていた嬌声を上げる。
「はっ・・・、ん・・・っああぁ」
「足、閉じないで」
香穂子は背を柚木に預け、乱れ喘ぐ。
足を広げられると指が最もイイ場所を掠めた。
「あぁっ、もう・・・・っ!」
ゾクゾクとした快感が突き上げ、絶頂に身を委ねる。
しかし、逐情を迎える事は叶わなかった。
柚木が途中で指を抜いたのだ。
「もういいよな。 のぼせるぜ」
そう言って、柚木はザバリと立ち上がった。
散々弄ばれた挙句、中途半端なままの香穂子はキッと強く睨み付ける。
「――― 意地悪!」
「今更だろう? 次は身体を洗ってやるよ」
「結構です」
「遠慮するな」
「別に遠慮なんか・・・・って、ちょっと!」
身体が宙に浮いたかと思えば、浴槽から外に出されてしまった。
そして柚木の前に座らされ、逃げようともがく前に捕縛される。
「逃がさないよ」
スルリ・・・と、ボディーソープを泡立てた彼の手が香穂子の背を撫でた。
たったそれだけの事が、熱を持て余している香穂子には過ぎる程の刺激になる。
無意識に腿をすり合わせる仕草を観察しながらも、柚木は敢えてそこには触れてやらなかった。
「・・・はぁ、あ・・・やだ・・・」
「ただ背中を洗っているだけなのに感じているの? いやらしい子だね・・・・」
「ちがっ・・・!」
「違わないでしょう。 ココをこんなに尖らせているクセに」
そう言って柚木は後ろから胸を揉み、もう片方はその突起を指先で弾く。
すると先程より甘くなった声を浴室中に響かせ、香穂子は柚木に凭れ掛かった。
トロンとした表情を見せられて雄が疼かない訳ではないが、それでも柚木は焦らし続ける。
わざとらしいほど他を洗っていたけれど、もう洗う場所も無くなってしまった。
「じゃあ、最後に此処だね」
「ひぁ・・・っ」
今まで散々放って置かれた場所をひと撫でされるだけで、電流が走ったかのように身体が跳ねる。
もう其処は湯船で刺激された余韻と、放置されていたもどかしさが合わさって先程よりも蜜が溢れていた。
「さっきよりも汚れているな。 洗って綺麗にしてあげる」
柚木は再びぷくんと膨らんだ芽を摘まむ。
しかし、ボディソープで滑りやすくなった手では上手く摘まめずに、ツルンと花芽が指に擦れた。
思いの外、強く擦れた為に香穂子は声もなくあっさりと達してしまった。
「何だ、もうイッたの?」
自分がそうさせたクセに相変わらず勝手な事を言う柚木を振り返って睨み付ける。
けれど身体は力が入らないし、息も上がっているのであまり迫力はないかも知れないが・・・・・。
対して柚木は香穂子の視線には意にも介さず、今度はシャワーを手に取った。
温かいお湯を浴びて身体についた白い泡が排水溝へと流されていく。
その心地良さに先程の憤りも忘れ、達した後の気だるさも相まって再び柚木に身を任せる。
だが、それがいけなかった。
「やぁぁ―――・・・・っ」
油断していた時に突然花芽に先程よりも更に強い刺激を受けた。
瞳を開けてみると、水力が強いままのシャワーを直接そこに当てている。
香穂子は限界まで背を撓らせて、逃れようと腰を振った。
しかし、動く度に当たる位置が変わって逆効果となるが自分ではもう止まれない。
言葉さえも話せず、香穂子は泣きじゃくるように嬌声を上げた。
「あっ、あっ、やっ、あぁっ・・・いやあぁッ――」
「足閉じるな。 泡を落とせないだろう」
「ひぅっ・・・!」
「あれ、おかしいな・・・。 洗っている筈なのに余計ヌルヌルしているぜ・・・?」
「もういい、もう充分です・・・・!」
「まだダメだよ」
柚木はその訴えを一蹴して、もがく香穂子の身体を更に水流で追い詰める。
しつこくそうしていると、香穂子はビクビクと腰を震わせて再び達した。
二回も連続で達した香穂子は可哀想なほど吐息を乱している。
だが、柚木はまだシャワーで攻める事をやめない。
過ぎる快楽を持て余し、遂に香穂子はボロボロと涙を零してしまう。
それを見た柚木は一瞬驚いて目を見張り、次に溜め息を吐いた。
「・・・ああもう、悪かったよ・・・だから泣くな」
流石にやり過ぎたと思い、シャワーを止める。
よく 『好きな子の涙を見ると余計にそそられる』 と言うが、柚木はそこまで鬼畜にはなれない。
好きな人の涙より勝る欲望など無いから。
柚木は涙を指でそっと拭ってやり、今度は宥めるように優しく囁いた。
「今度は意地悪しないで香穂子のして欲しい事してやるから・・・ね、もう泣くなよ・・・」
「・・・っぅ・・・ふ・・・」
「もう嫌だったら、このままやめてもいいし」
柚木はもし香穂子が頷いたら本当にやめる積もりでいた。
しかし、答えは 『NO』 だった。
「いやっ・・・途中でやめないで・・・」
「じゃあ、どうしたいの? 香穂子の言う通りにしてあげるよ」
「・・・耳、貸して下さい・・・」
ここには自分たち以外は居ないのだから耳打ちする必要はないのに・・・と思いながらも、耳を傾けた。
コソっと打ち明けた内容に香穂子は赤面し、柚木はふわりと笑う。
「本当にお前は可愛いね」
「柚木先輩・・・あの・・・」
「ああ、もう焦らしたりなんてしないからそんな顔しないの」
不安げに皺を寄せている眉間に軽く口付けて柚木は体勢を入れ替える。
今度は壁側に香穂子を座らせ、自分の腕で彼女を閉じ込めた。
「・・・・いくよ?」
香穂子の秘部に自分の昂ぶりを宛がい、頷くのを見届けてからそれを埋める。
奥まで入り、何度か快楽に理性を奪われそうになりながらも必死に堪えて緩やかに律動を始めた。
「・・・んっ、あっ・・・あぁ・・・っ!」
「香穂子、俺の背に腕をまわして」
「でも・・・引っ掻いちゃうかも・・・」
「平気だよ。 それに、それはお前が乱れている証だしな」
「・・・っ、どうしてそういう恥ずかしい事を言うんですか!」
「―――香穂子」
「・・・・もう」
促されて、香穂子はのろのろと腕をまわす。
と、同時に柚木の腕も香穂子の背にまわって二人の身体がグッと密着した。
「・・・ひぁっ!」
必然的に中のものも深くなり、香穂子は思わず声を上げる。
待ち望んでいた充足感を得られ、ねだるようにして更に柚木へしがみ付いた。
そうすると柚木の腕の力も強くなって、二人はしっかりと抱き合う。
「せんぱい・・・柚木・・・先輩・・・・・!」
「・・・香穂子・・・好きだよ・・・・っ」
最奥を突かれ、香穂子は身を撓らせて達すると柚木も息を詰めてすぐに達した。
**************
やがて呼吸も落ち着きを取り戻すけれども、二人は抱きしめ合ったまま離そうとはしない。
直に肌を重ねているため相手の心音がとても心地良かった。
情事の余韻と肌の温もりとが相まって、香穂子はうとうとと眠気に誘われる。
それに気付いた柚木は香穂子の肩を軽く揺すった。
「おい、こんな場所で眠るなよ・・・・?」
「・・・・ん・・・・」
寝息とも返答とも判別つかない香穂子の様子に柚木はそっと溜め息を吐いた。
「―――まったく、世話の焼ける・・・・」
呆れたような口調とは裏腹に、寝入ってしまった香穂子を見つめる瞳はどこまでも優しい。
存外長く湯から出ていた身体はとうに冷え、柚木は香穂子を抱えて再び湯船の中へ浸かる。
じんわりとした温かい湯と、腕の中の大切な存在に柚木は身も心も満たされていた。
*************
★あとがき★
お風呂エッチ第2段 (笑)
いやぁ、長かった・・・・そして殆どヤッてるだけ・・・・。
でもシャワー攻めが書きたかったの (腐)