王子様の素顔を暴け!!
ここ、星奏学院で催された学内コンクールも終幕を遂げ、25年振りのロマンスも起こった。
起こした本人は、私の親友である日野
香穂子。
その相手は・・・・・私が今、一番気になる人で3年のプリンス、柚木
梓馬。
あっ、「気になる」っていうのは恋愛対象としてとかじゃないよ?
親友の彼氏を私が取ってどうするのさ。
まぁ、中には未だにとやかく言う人もいるけど、私は賛成だな!
うん。
――――って、本題から反れたね。
柚木先輩だけど・・・・胡散臭いと思わない?
こんな事、公に言ったら信者の方々に何されるか解らないけど、人間あそこまで完璧な人はいないと思う。
もちろん柚木先輩も例外なく、ね。
一回コンクール中に香穂に問い詰めたんだよね。―――まぁ、否定はしてたけど。
だけどあの子、嘘をつくの下手だから目が泳いでるワケっ!!
んで、都合よく柚木先輩が現れてその場は断念せざるを得なかったんだけど・・・。
「―――ねぇ、天羽ちゃん!! 聞いてる?」
どうやら思考に耽っていた私は、香穂の声で我に返った。
「あぁ、ゴメンゴメン! 考え事してた」
「もう授業終わったよ? これからお昼なんだけど・・・・えーっと・・・」
「あー、はいはい。柚木先輩と食べるんでしょ? 相変わらずお熱い事で!!」
「あっ、天羽ちゃんッッ!!!」
顔を真っ赤にして怒っても可愛いだけなのにねぇ・・・・。
って言うと、拗ねるから言わないケドね。
「あ、柚木先輩だ」
「えっ!?」
そう言ってドアの方を指さすと、香穂は即座に振り向いた。
もちろん、これは私の嘘だから実際に柚木先輩はいない。
「あーもーうーちゃーんー!!!」
やば。
ちょっとやり過ぎた?
どうやって香穂の怒りを鎮めようか策を練っていると――――。
「あーっ!!
香穂、香穂っ!!待ち人来たよ!」
「馬鹿にしてんの!? 二度も同じ手に掛かる訳――――」
「日野さん・・・?
何を怒っているのかな?」
ゆっくりとした口調と同時に黄色い悲鳴が起こる。
紫紺の長い髪をさらり、と片手で梳いて佇む姿は誰が見ても貴公子然としている。
「ゆっ、柚木先輩!!」
『ほら見ろ』と言わんばかりの顔をしてやると、香穂は小さく『ごめん』と謝った。
いや、この場合私が悪いんだけど謝る辺りが香穂らしくて私は好きだなぁ。
「いつも日野さんに三年の音楽科の教室まで来て貰っているでしょう?
だから、たまには僕が日野さんを迎えようと思ったんだけど迷惑・・・だったかな?」
声のトーンを下げて少し寂しそうな顔をすると、途端に周りの女子が非難めいた目を香穂に向けた。
すると、香穂は慌ててフォローに廻る。
「い、いえっ!!
迷惑なんかじゃありませんよ!」
「そう? 良かった。
それじゃあ、行こうか」
そう言って笑顔になる先輩の顔には先ほどの寂しそうな表情は微塵もなく、穏やかだった。
何か、その変貌ぶりが気になるんだよなぁ。
まるで、香穂をわざと困らせて楽しんでいるような・・・?
「じゃあ天羽ちゃん、またね!!」
ひらひらと手を振る香穂に向かって、私も手を振り返して二人を見送った。
いつもならここで私も直ぐに部室でお弁当を持って行って食べるけど、今日は違う。
愛用のカメラと録音機を持って二人の後を追いかけた。
着いた場所は、屋上だった。
まぁ、確かにここは人通りもないし邪魔されたくない時には最適かもね。
私は気付かれないように二人から死角になって、かつ近い場所をキープした。
香穂は先輩の素性を知ってるっぽいし、先輩も香穂と二人なら本性を出すはずっ!!
私は全神経を耳に集中させて、二人の会話を聴く。
「・・・ねぇ、先輩・・・・そろそろ・・」
「まだ駄目。
今日遅れたでしょう? お仕置き、だよ」
―――――――――
はい?
えーと・・・二人はお弁当を食べてる・・・はずだよね?
「こっちはどうかな?」
「あぁ・・・っ それ―――
ヤダ・・・!」
「ふふっ、これが好きなの・・・?」
「ち、違・・・っ!」
「素直じゃないね」
ちょっと、ちょっと、ちょっと・・・・・!!!
確かに二人は恋人同士だよ!?
でも、まだ学校内なんですけどっ!!!!
ここは一生徒として、注意すべき!!?
それとも、友達として見逃す?
ううん、そもそもこんな所であんな事してる方が悪いんだよね!?
うん!
私は『友達として』注意すべきなんだよ!!
よし、と気合を入れて死角になっている壁から飛び出した。
「ちょっと!!
柚木先輩、香穂子!! さっきから何やって――――って・・・・あれ?」
そこには、お弁当を広げている香穂と柚木先輩。
しかも、制服をちゃんと着ていて乱れていた気配は全くない。
「ど、どうしたの?
天羽ちゃん・・・・」
「何って・・・ただお弁当を交換し合っていただけだよ。 ね?
日野さん」
先輩の言葉に、コクリと頷いて香穂は言葉を続けた。
「けどね、私が『教室に来るの遅れたから』って言って先輩がその豪華なお弁当なかなかくれないんだよ!」
意地が悪いよね、と香穂が私に同意を求めたけどそれどころじゃなかった。
「・・・じゃあ、あの会話はただの弁当争い・・・?」
先程入れた気合も消沈して、ぺたりと地面に座り込んだ。
「ねぇ、どこか具合悪いの・・・?
保健室に連れて行こうか?」
香穂の言葉に『いい』と短く答えて、そのままヨロヨロとおぼつかない足取りで屋上を後にした。
はぁ・・・・。
私一人で焦ったりして馬鹿みたい・・・・・・・・。
脱力したせいで『柚木先輩の素性を破る』という意気込みも何処かへ消えてしまった。
**おまけ**
「ねぇ、先輩。
あそこに天羽ちゃんが居た事初めから知っていたんですか?」
「当たり前だろ?
それでなくても前々から俺は彼女に目付けられていたからな」
「はぁ・・・。
だから行動は『黒』なのに口調は『白』だったんですね」
香穂子は少し感心しながら言った。
「白ってお前・・・。
俺はオセロか?」
「似たようなものじゃないですか」
香穂子の言葉に柚木は悪辣に笑った。
「へぇ、言うようになったね。
本当にお仕置きが必要みたいだな・・・香穂子」
「じょ・・・冗談ですよ!!
本気にしないで下さいってば!」
「もう遅い」
逃げをうった香穂子を素早く捕らえた柚木はそのまま押し倒した。
完
*****
☆後書き☆
思いっきりギャグです。(笑)
いやぁ〜、一回紛らわしいセリフを言わせてみたかったんですよ!!
って、言っても私が書いたので大したものは出来ませんが。
天羽ちゃんサイド、面白かったです!!!
彼女って書きやすいですから、珍しくつっかえる事なく楽に書けました〜vv
あ。
ただ、紛らわしいセリフは四苦八苦しましたね〜(汗)
でも、こーゆーのは考えてる間も面白いんで本当に楽しめましたよ。
ただ、キャラが壊れてない事を祈って・・・・!!(焦)
『おまけ』での最後はご想像にお任せしますvv
―――って、あそこまで書いといて想像も何もありませんが。
ではでは、ご朗読ありがとうございました!!